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レノボ・ジャパン檜山社長に聞く、ブランドやビジネス、テクノロジーの変化と期待

國谷武史 (編集部)

2024-04-24 06:00

 レノボは、製品領域ごとに多様なグループ企業やブランドを展開しているが、近年は1つの「レノボ」を強調する動きを見せる。メディアのグループインタビューに応じたレノボ・ジャパン 代表取締役社長およびNECパーソナルコンピュータ 代表取締役執行役員社長の檜山太郎氏に、グループの動向やビジネス、テクノロジーなどの取り組みを尋ねた。

レノボ・ジャパン 代表取締役社長およびNECパーソナルコンピュータ 代表取締役執行役員社長の檜山太郎氏
レノボ・ジャパン 代表取締役社長およびNECパーソナルコンピュータ 代表取締役執行役員社長の檜山太郎氏

--レノボは製品領域ごとにさまざまなグループ企業やブランドを展開していますが、F1でのブランディングなどによって、変化しているのでしょうか。

 直接的な回答ではないかもしれませんが、レノボは日本市場に多くの投資をしており、これまで、「ThinkPad」に代表される旧IBMのビジネスや、NECからのPC事業(NECパーソナルコンピュータ)、富士通からのPCやスマートフォン(FCNT)などのビジネスを買収して拡大し、それぞれのブランドが独立した製品事業部制のような展開をしていました。

 私見にはなりますが、現在のIT市場はコロナ禍の急拡大を経てやや頭打ちの状況となっており、レノボとしては、2023年からグローバルでそれまでの強みをグループとして統合的に発揮していくという方針に変わりつつあります。マルチブランドの冠としての「Lenovo」を位置付けるために、意識するために、社内的にもそれに向かっていくためにも、F1のような機会を生かして、グローバルで統一されたブランドにグループをまとめて行くことが、マーケティング的にも社内的も必要だと考えています。

--ここ数年は「生成AI」を含むAIが注目されています。このトレンドをどう見ていますか。

 従来のITは、登場したテクノロジーを人が活用して成果が広がるという流れでしたが、AIは、初めてテクノロジーが人に近づきサポートをしていくという新しいパターンだと思います。

 例えば、私はお客さまを訪問する際に必ずアニュアルレポートに目を通しますが、熟読するのは大変です。レポートの内容をAIで簡潔にまとめることができるようになり、さらには、AIが私の訪問予定を読み込んで、訪問先の資料の作成を提案してくれます。これは、私自身がテクノロジーを使いこなしていくというより、テクノロジーが私に寄り添うという点ですごいことだと感じます。

 また、言葉を発することが不自由で手話を使われる方をAIが支援するシーンも衝撃的でした。AIが手話の様子を認識して文字に起こすだけではなく音声でも出力することに驚いたのです。AIが先々において多くのことに貢献すると期待されていますが、人によって課題は異なりAIの貢献も多様となるでしょう。このため「AIで何ができるのか」と簡単に示すことが難しいということもあるのだと思います。

--AIへの期待の一方で、データの学習などに膨大な電力を消費する課題もあります。IT企業として、この相反する状況をどう解決できると考えますか。

 メーカーとしても一番の課題だと捉えています。われわれも2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を打ち出しており、電力消費を抑制するためのさまざまな取り組みを進めていますが、AIが登場したことにより、この取り組みのペースをもっと引き上げなければいけませんし、全社を挙げて推進しようとしています。

 一例では、製品の梱包(こんぽう)材に竹やサトウキビといった再生可能な原料を採用しています。製造においても、2025年までに90%以上で再生可能な部品を搭載すべく取り組みを進めています。こうしたことは1社だけでは困難であり、製品設計から部品調達、物流までのあらゆる領域でパートナー企業と年月をかけて推進しています。

 ユーザーにも負担をお願いし、業界で初めて二酸化炭素のオフセット権を商品化しました。「SBTi」(Science Based Targets Initiative)の指標を用いてThinkPadを5年間使用することに伴う二酸化炭素の排出量を算出したところ1~1.5トンになることが分かりました。お客さまには、この分の排出権を製品と一緒に購入いただき、われわれがその分の排出抑制に取り組むことで、お客さまが製品購入分の排出量を相殺することができます。

 また技術面の取り組み例では、低温はんだがあります。製造には必ずはんだ付けを伴いますが、大和研究所の取り組みで約230~250度になるはんだ付けを約180度の低温で可能にし、生産過程において約3~4割の電力消費の削減を進めています。こうしたバリューチェーン全体を通じた電力消費の削減を継続して推進していきます。

--生成AIはクラウドソリューションが中心ですが、2024年はデバイス側でのAI処理のトレンドが出てきています。ここではレノボに商機はありますか。

 あると思います。「ChatGPT」を使うだけなら、オープンなクラウドに接続すれば利用できるでしょう。しかし、先ほど述べた私がお客さま先に訪問するスケジュールの把握や関連資料の要約といった用途になると、クラウドにアップロードできない内容もあります。そうなると、デバイス内部で完結しなければならないものがかなり出てくるのでしょうし、デバイス勝負となれば、レノボの得意領域だろうと考えています。

 特にセキュリティは、パーソナルな領域になるほどデバイスで区分する、ユーザーが所属する組織の中でデータを活用する、あるいはパブリックな領域ではさまざまな情報をインターネットにアップロードしていくといった目的に応じて、かなり区分が変わってくるでしょう。そこで、レノボがデバイス側でどうしていくのかという点があります。

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