Oracle CloudWorld

自動化で開発がもっと自由に--オラクルCTO・エリソン氏が生成AIに見る未来

大場みのり (編集部)

2023-09-22 08:00

 米Oracleは現地時間9月19~21日、年次カンファレンス「Oracle CloudWorld 2023」を開催している。18日は最高経営責任者(CEO)のSafra Catz氏に加え、創業者で最高技術責任者(CTO)のLarry Ellison氏も基調講演を行った。Ellison氏は世界中で熱狂をもたらす生成AIへの見解を述べるとともに、同日発表の自社サービスを複数解説した。

 「約1年前、OpenAIが『ChatGPT』のデモを披露した。ChatGPTを開発した人々は、赤ちゃんが(初めて)しゃべった時のように驚いた。正直なところ、(質問に対する回答を)期待していなかったのだ」とEllison氏は口火を切った。

Oracle 創業者 兼 CTOのLarry Ellison氏
Oracle 創業者 兼 CTOのLarry Ellison氏

 OpenAIは、Elon Musk氏らが約10年前に設立した会社。同社は数十億の人工ニューロン(モデル化された神経細胞)で構成される巨大な人工ニューラルネットワーク(モデル化された神経細胞ネットワーク)を構築したという。人工ニューラルネットワークの構築後、同社は膨大な量のデータでトレーニングを実施。公開されているインターネット情報を大規模に読み取った。

 人工ニューラルネットワーク自体は以前と同じアーキテクチャーだが、「GPT-3.5」の特徴は人工ニューラルネットワークとトレーニングデータの規模が圧倒的に大きい点だという。「規模を変えたところ、質問を投げかけるとChatGPTが回答するようになった」とEllison氏は説明した。

 「これまでテクノロジー業界における多くの出来事は、世界中の政府の党首や他の業界で働く人々の関心を集めることはなかった。これを言うと私の年齢が皆さんより高いと分かってしまうが、生成AIの衝撃は『スプートニク』のようだと思う。かつてソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)が初の人工衛星であるスプートニクを打ち上げた時、私たちの想像力を刺激した。当時のスプートニクのように、誰もが生成AIの存在を知っている」(Ellison氏)

 Ellison氏は今後、「より良いAIを提供するためのレース」が世界中で起きると見ている。そして、生成AIはより良い未来をもたらす一方、歴代のテクノロジーと同様に重大なリスクを伴うとする。「火から、槍、原子力まで、全ての新しいテクノロジーは悪用される可能性がある」と同氏は懸念を示す。

 「しかし概して、テクノロジーの進歩は人間の生活を豊かで快適なものにしてきた。生成AIは、史上最も重要な新しいコンピューターテクノロジーなのだろうか――。1つ確かなことは、生成AIと大規模言語モデル(LLM)には数十億ドルが投資されているということだ」(Ellison氏)

 「GPT-3.5は、もはやOpenAIの最新モデルではなくなり、GPT-4が登場した。わずか1年ほどで、Cohere、 OpenAI、その他の企業は、言語だけでなく画像も生成するLLMを開発した。これらのLLMは作曲したり、作詩したり、コンピューターのコードを生成したりでき、いわば人間に近づいてきている。そして1年以内に、Teslaは完全な自動運転車を完成させるだろう」と同氏は所感を述べる。

 「Oracleは長年AIを使用してきたが、生成AIは革命であり、当社の状況を根本的に変えようとしている。われわれが行うほぼ全ての事業はAIが中心となる」とEllison氏は断言した。

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