HPE Discover

HPEは拡大戦略に入った--ホイットマンCEOが語る現在、過去、未来

末岡洋子

2017-06-23 07:30

 シリコンバレーの名門企業Hewlett Packard Enterprise(HPE)が重要な転機にある。分社化から1年半、同社の直近の業績は損失を計上した。クラウドが主流となり、サーバベンダーのビジネスそのものが以前のような成長を見込めない状況で、HPEはどうやって「逆風」を切り抜けるのか。

 6月に米ラスベガスで開催したイベント「HPE Discover Las Vegas 2017」で最高経営責任者(CEO)のMeg Whitman氏が記者・アナリストからの質問に答えた。

最高経営責任者(CEO)のMeg Whitman氏
最高経営責任者(CEO)のMeg Whitman氏

 Whitman氏はまずHPEの戦略を説明、1)ハイブリッドITをシンプルに、2)インテリジェントエッジ、3)これらを実現するサービス「Pointnext」という3つを柱に、開発、提携などすべての企業活動を連携させているとした。HPEは2017年に入り、NutanixのライバルSimpliVityをはじめ、数社を買収したが「買収は顧客やパートナーに信頼を与えた」とWhitman氏は言う。

 拡大するDell Technologiesを示唆しながら、「われわれは戦略が明確で、俊敏に動ける企業を目指している。イノベーションを迅速に届けられる」とWhitman氏。「分社化は大きな成功」と2年前の自身の判断を正当化した。

 分社化の後もエンタープライズサービスをCSCに統合してDXC Technologyを発足させ、アプリケーションソフトウェアをスピンオフした。Whitman氏は「(HPE、PC/プリンタのPC、DXC、ソフトウェア事業のスピンオフの)4社はそれぞれの分野で成功している」と述べる。

 以下が1時間にわたるQAセッションでのやり取りだ。Whitman氏のほか、エンタープライズグループのエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Antonio Neri氏も参加した。

エンタープライズグループのエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Antonio Neri氏も
エンタープライズグループのエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Antonio Neri氏も

ーー買収戦略は?

Whitman氏 HPEのイノベーションのアジェンダは3つある。まずはオーガニック、つまり社内開発だ。われわれは社内開発を最も重視しており、イベント中に発表した最新世代のサーバ「Gen10」、コンポーザブルインフラ「Synergy」、3PARのオールフラッシュアレイなどはこの産物だ。オーガニックなイノベーションエンジンはHPの強みで、HPEとなった現在も受け継がれている。

 2つ目は買収。とはいえ、買いあさるのではない。買収から最大のものを得られるか。費用対効果を考えている。

 過去のM&Aでうまくいった例は、補完的な技術であることが多い。3PAR、Arubaなど、市場展開の戦略を活用できる。先に買収したSimpliVity、Niara、Nimbleなどもこのモデルを踏襲しており、このような買収を今後も行う。だが、価格が適切でなければならない。

 3つ目はベンチャー投資とパートナーシップのPathfinderだ。最新の技術を開発するスタートアップをパートナーと顧客向けにHPEがキュレーションする。スタートアップの中には売り上げよりも損失の方が大きいところもある。そのため(買収はせずに)投資をして、我々のソリューションに彼らの技術を入れ、顧客がすぐに利用できるようにする。例は、Dockerのサーバー統合、Chef、MesosphereなどのOneView統合などだ。このような提携は今後も拡大する。目的はリターンではなく、シリコンバレーの最新技術を顧客向けにキュレーションすることだ。

ーー研究開発への投資は?

 The Machineは大きな賭けとなるが、他にはどのような分野を見ているのか?

 Neri氏 イノベーションには、短期、中期、長期の3つのフェイズがある。

 短期としては、現在の中核事業を独自のイノベーションを通じて加速すること。次に、中期ではこれを進め、18-36ヶ月先を睨み、中核事業の環境がどうなっているか、差別化のために投資すべきことは何かを考える。例はセキュリティ、機械学習、インメモリソリューションとしてのビッグデータアナリティクスなどだ。

 最後に、5年以上先を見て考える。例はThe Machineだ。将来はインテリジェントな分散型コンピューティングになると見ている。我々はここで知的所有権(IP)を持っており、開発の歴史がある。

 これに加えて重要なのがサービス事業だ。IPを加速し、顧客のデジタルトランスフォーメーションを効率よく支援する。例えば機械学習を利用して、オンプレミスとオフプレミスの効率よい運用を進めることができるだろう。HPEはちゃんと成果を生むソリューションのためのコンサンプションモデルを提供する。

 重要な柱であるインテリジェントエッジでは、ソフトウェア定義インフラからアプリケーションまで、効率よく支援できるよう開発を進めている。

Whitman氏 興味を持っている分野として、高性能コンピューティングがある。データが爆発しており、企業、政府、研究機関とどこも膨大なデータへのアクセス、効率の良い洞察の取得を考えている。これにあたり我々はSGIを買収しており、今後も製品と技術のポートフォリオを強化していく。

 研究開発については、やり方を変えているところだ。これまではサイロ化されていたが、より生産性が高い研究開発を展開している。コスト構造を変えたので、投資も強化できる体制が整った。

 重要なことは、境界線を与えること。何をやってもいいとなると、たくさんのプロジェクトが生まれるが(成果につながらないこともある)・・・・・・。

ーー春に立ち上げたサービス事業Pointnextの位置付けは?

Whitman氏 Pintnextは、HPEのポートフォリオとIPをサポートする重要な事業となる。

 すべての産業の企業がトランスフォームしようとしている。敏捷さとコスト削減がHPEのソリューションの魅力となり、これをサービスをセットにして提供できる。

 (2016年に行った)エンタープライズサービスのスピンオフにより、競合する事業がなくなったことからAccenture、PwC、Capgeminiなど大手コンサルとの関係がさらに深くなった。

ーーチャネル戦略に変化はあるのか?

Whitman氏 HPEが企業をトランスフォームするにあたって、市場展開戦略も変革する必要があった。それにあたり、我々は初めてワールドワイドのセールス担当を設けた(Peter Ryan氏)。これまで国境を超えてHPE製品やソリューションを導入するのは複雑だったが、そのような障害を除去していく。チャネルを優先する”チャネルファースト”に変わりはない。サービス以外の売り上げの75%がチャネルからだ。この比率は今後さらに増えるだろう。

 チャネルパートナーが付き合いやすい、ビジネスをしやすい企業を目指している。分社により企業規模が小さくなったので、提供までの時間を短縮した。このように企業規模が大きすぎるために複雑になっていた部分をシンプルにした。市場展開戦略では、すでに大きな成果を遂げていると思う。

 HPEはソリューションを提供するベンダーを目指している。ボリュームビジネスは引き続き売り上げに大きく貢献するが、比率からすると減っている。

Peter Ryan氏 チャネル戦略の要は、エコシステムにバリューを加えること。オペレーションの効率化を支援しており、(パートナー各社の)収益性がさらに高まるようなことに取り組んでいる。

 先に、ソリューション認定制度をスタートした。SAP HANAなどスタックを売りたいというチャネルパートナーに対し、そのために必要なスキルや技術リソース情報をはじめとしたHPEのサポートを得られるものだ。

 また、パートナーの中にはサービスプロバイダーの要素を強めているところもある。クラウドを提供しているが、幅広いマーケットにリーチできないという悩みを抱えており、こういったチャネルパートナーには市場へのアクセス、HPEの営業へのアクセスを提供する。

 パートナーからは、HPEのアプローチは差別化があるとの評価をいただいている。

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